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3年ほど前、六本木芋洗坂から六本木交差点方面へ向かって左に、干物がおいしいお店にあり、薄給にもかかわらず、週に何回か通っていた時期があった。その時私は20代半ば、お昼の定食で1,000円を裕に越える金額は、当時せいぜい初任給に毛が生えた程度しかもらえてなかった私にはどう考えても分不相応だったろう。それでも通うことを辞めることができなかったのは、干物が持つ香ばしさと張りのある魚肉のみずみずしさのせい。干物にすることで、魚はここまで新しい味わいと深みを持つことができるのかと、感動したものだった。
仕事の関係で、久しぶりに六本木を訪れた時、ミーティング前の昼時に久しぶりにその店へと足を運ぼうとした私の前に見えた、イタリアンレストランの看板。落ち着いた艶のある木の看板はそこにはなかった。入れ替わりの激しい土地柄、これもまた移り変わった時間のせいかと、少し寂しく思ったものだが、それにしても惜しさは残る。
今回、ご紹介するのは、そんな干物への郷愁を思い出させてくれた「あん梅」(麻布十番)。麻布十番の太陽にあてて一夜干しにした鮮魚を、炭火でじっくりと焼く。コシヒカリを優しく炊いて遠慮がちに盛られたご飯と一緒に食べる幸せは、少し大人になった僕には、ちょっと懐かしくて恥ずかしい。

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